☆ スマートメーターBルート情報取得とその活用

 9月21日より、IIJスマートメーターBルート活用サービス無償トライアルを利用して、第一、第二発電所スマートメーターの遠隔モニターを開始しました。

 

 サービスの詳細はリンク先のIIJさん(以下、IIJと表記)のホームページでご確認していただくとして、当社の利用形態を簡単に紹介すると、「スマートメーターの電波を受信できる範囲内にSA-M0というゲートウェイ機器をセットし、インターネットにつないで、IIJのPMSというウェブサイトで所期の設定を済ませると、売電と買電の両方について、瞬時電力値(W)と30分電力量(Wh)が分かる」というものです。データは3ヶ月間保持され、ダウンロードできる機能もあります。

SA-M0本体

発電所設置のボックス内


 

 データは送配電事業者である東京電力パワーグリッド株式会社が設置したスマートメーターが計測したそのもので、電力会社が料金を計算する元になる値と同一です。このサービスを使えば、電力会社から毎月の通知が来る前に、ほぼリアルタイムに最新データを知ることができるという画期的なものです。未だに東京電力パワーグリッド社の計量データ遅延、データ不具合問題が解消されていないなか、発電事業者が自ら正確な計量データを手元にもっているということは大変な強みです。

 

 さて、PMSのサイトでどのように表示されるかは、下の画像をご覧ください。これは1日を通してほぼ晴天だった11月13日の第一発電所のスマートメーターの記録ですが、瞬時電力が上段に折れ線グラフで、30分間ごとの定時電力量は下段の棒グラフで示されます。グラフ中の一番左に目盛りがありますが、0より上(正方向)が電気を消費、つまり買っている場合の値が示され、0より下(逆方向)がいわゆる逆潮流、つまり売電時の値が示されます。

(発電事業者としては、発電が谷型より山型のグラフになってほしいものですが、IIJのポリシーでここは仕様変更できないとのことでした)

 

 瞬時電力計測値のグラフについてみますと、第一発電所は49.5kW (PCSベース)がピーク出力です。11月13日は発電所の緯度・経度で計算した南中時の太陽高度は36.6°で、設置角20°の太陽電池モジュールへの垂直離角は33.4°(年間最大値は38.8°)もありますから、この日計測されたピーク発電電力値40kWというのは、発電所の正常を示しているものと思われます。

 

 もう一方の定時電力量のグラフについてみてみます。当社発電所に設置されたスマートメーターはCT(整流器)付きの乗数60(メーター指示値の60倍を乗じて値を求めるもの)という特殊なもので、この記事を執筆している時点でIIJのこのサービスでは対応していません。よって下段の定時電力量の棒グラフの値は実際のものと異なります。IIJの技術の方とお打合せし、12月上旬には対応していただけることになりましたので、もうすぐ表示も正確になると思います。 

 


  このIIJのPMSが優れているのは、REST APIという外部連携機能が実装されているところです。簡単にいうと欲しいデータを指定された形式でリクエストするとPMSのサーバーからその情報を取り出すことができるということです。データが保存されている3ヶ月間であれば、その間のメーターの値を遠隔で読みだすことができます。

 現在、PMSサイト上では正方向のデータしかダウンロードできませんが、このAPIの機能を使うことにより逆方向の発電データも取得することができます。

 

 当社では毎月の作業として、欲しいデータのコマンド(目的のスマートメーター、月次や日次の別、保存ファイル名などの指定)を作成し、Windows PCのコマンドプロンプトからcurlという実行プログラムを使って情報を取得しています。取得できたデータはJSON形式というもので、そのままでは難読なので、TeraPadというテキストエディタで改行や整形をした後に、Excelで読み込ませてデータ解析をしています。

 

■ダウンロードしたJSON形式のデータ例

{"measured_at":"2016-11-13T06:30:00.000+09:00","missing":false,"value":576.31},{"measured_at":"2016-11-13T07:00:00.000+09:00","missing":false,"value":576.32},{"measured_at":"2016-11-13T07:30:00.000+09:00","missing":false,"value":576.38},{"measured_at":"2016-11-13T08:00:00.000+09:00","missing":false,"value":576.52},{"measured_at":"2016-11-13T08:30:00.000+09:00","missing":false,"value":576.72},{"measured_at":"2016-11-13T09:00:00.000+09:00","missing":false,"value":576.96},{"measured_at":"2016-11-13T09:30:00.000+09:00","missing":false,"value":577.23},{"measured_at":"2016-11-13T10:00:00.000+09:00","missing":false,"value":577.53}


■Excelでの集計例

日付 時刻 メーター
読取値
差分 乗数60倍
=発電量(kWh)
2016/11/13 6:00 576.31 0.00 0.00
2016/11/13 6:30 576.31 0.00 0.00
2016/11/13 7:00 576.32 0.01 0.60
2016/11/13 7:30 576.38 0.06 3.60
2016/11/13 8:00 576.52 0.14 8.40
2016/11/13 8:30 576.72 0.20 12.00
2016/11/13 9:00 576.96 0.24 14.40
2016/11/13 9:30 577.23 0.27 16.20
2016/11/13 10:00 577.53 0.30 18.00

 

 スマートメーターが読めるようになって役立ったことが他にもあります。

一般に太陽光発電所は電気を供給するわけですが、小売電力会社から電気を買う必要もあります。発電していない夜間や極端に低日照の時間帯にパワーコンディショナの待機電力、起動電力が必要だからです。

 

 例えば第一発電所では運転開始以来、パワーコンディショナのカタログ上の待機電力30W ×5台×12時間(年間平均1日当たりの夜間時間)×30日=54kWh/月が月間使用量とみなされ、低圧電力1kWでの契約を結んでいました。電力量計1台のみの設置で、売電量しか計測できなかったためですが、この設置方法はよく行われていました。

 

 しかし、スマートメーターの正・逆両方向の瞬時電力が見られるようになってから、夜間の電力消費がそんなにも大きくないことが明らかになりました。次のグラフは11月13日の夜間の瞬時電力です。5台のパワーコンディショナを合わせても36W程度で済んでいます。その次のグラフは発電をはじめる直前の日の出のころのものですが、パワーコンディショナが起動する際に一番電力を使うようで、250W程度のピークを示しています。しかしこれは極めて一時的なもので、他の日も同様の数値を示しており、夜間の平均消費電力はとても150Wのレベルにはならない見通しがつきました。


 よって、東電木更津支社に出向いて交渉した結果、低圧電力契約容量を1kW→0.5kW、使用量をみなしの54kWh→メーター計量値に切替えました。これにより基本料金は半分になり、11月1ヶ月間の実績を集計してみたところ、実消費量は24kWhで済み、54kWhに比べれば44%にすぎませんでした。

季節料金や燃料費調整額の変動によって削減できる金額は変わってきますが、年間で最低7,500円ほどは軽減できると試算しています。

 

 また、ダウンロードしたデータから第二発電所の切り換え前後の計量、料金請求が間違っていたことが判明し、東電も再チェックして誤りを認め返金に応じるなど、当初は想定していなかったBルートデータの利用価値を見出す結果となりました。

 

 IIJスマートメーターBルート活用サービス無償トライアルももうじき終了と聞いていますが、有償サービスとなっても月額利用料やSA-M0の買取価格もお手頃のようです。当社では継続して使用していきたいと考えています。

 

 発電事業者もこうしたBルートデータによって正確な発電所管理を行える時代になりました。気象観測装置、監視カメラと合わせてインターネットに接続して使う遠隔管理システムの提案も進めていきたいと思います。