★非常時電源の考察

台風15号の際の長期停電対策ではうまくいったPHV充電用の鉛蓄電池システムの非常時電源利用ですが、有効に機能したのは色々な条件がそろっていたからだと思います。備忘録の意味で、こうした条件を書き留めておきたいと思います。

  • 家屋やバッテリ小屋、設備やシステムに損傷がなく使用ができたこと
  • 非常電源として利用するためのインバータ、ドラムリール、ケーブル類がすぐ使える状態で一箇所に保管してあったこと
  • それらの故障や不具合が発生しなかったこと
  • 長期停電の非常事態の想定を事前にしていたこと
  • メインの蓄電池設備や補充電源である太陽電池モジュールは常用して使い慣れており、問題がない状態にあったこと
  • 鉛蓄電池の劣化を検知し、1ヶ月前に交換対応したばかりだったこと

非常時のための機器は、非常時にしか使わないということであれば、物置の奥にしまい込み埃をかぶった待機状態になることがしばしばだと思います。しかし、これではいざという時に、「使い慣れていないため使えなかった」、「故障していた」、「必要な部材が欠けて使えなかった」などの問題が発生しかねません。かといって、年に1度くらい防災訓練として、使用点検をするというのもなかなかできないものです。

 

非常食の消費期限を管理するために、在庫の非常食を平時に食べて、買い足し補充するというやり方が推奨されていますが、非常時電源も同じような考えのもと、平時にもできるだけ常用すべきだと考えます。こうすることで上述のような問題を回避できます。

 

次に大切なことは、非常時電源をどのように使いたいかの事前想定(あるいはポリシー)です。

私の場合は以下のように考えていました。

  • 非常時なのだから、平時のような全部屋で自由に電気が使えないのは当たり前
  • 生活に必要な設備はダイニングルーム、リビングルームに集中しているため、そこを宅内避難所と定める
  • 最低限使いたいのは、夜間用の照明(10W程度のLEDライトで十分)、情報収集用の液晶テレビ、PCやスマートフォン、インターネット接続ルーター、断水時の井戸ポンプ
  • 次に余裕があれば使いたいのが、冷蔵庫、扇風機または石油ファンヒーター、洗濯機
  • その次に、温水器、炊飯器、電子レンジ、エアコン
  • 長期停電対策のためには蓄電池を太陽電池で補充充電(独立または自立運転)できるようにしておく
  • 住宅内の部屋や機器の配線を分電盤の分岐ブレーカーで再確認・明記し、容易に判別できるようにしておく

上記を運用するためのツールやスキルは次のとおりです。

  • 使用する電気製品の消費電力をラベルなどで把握しておき、非常時電源の供給能力との見合いで同時使用機器を調整する
  • ワットメータなどを用意しておき、累積消費電力量を計測し蓄電地残量管理をする
  • 蓄電池にも電圧計をセットし、蓄電残量を管理する
  • 非常時に宅内配線、分電盤を利用する場合は、その危険と手順に関する知識を持ち、確実に履行できること

こういった事前想定のもと、システムの規模を設計し、機材をそろえることとなります。

エコロジアハウス永地(千葉・袖ケ浦市)で構築していた平常システムと非常時の転用形態は下の画像のとおりです。 

 

平常時のPHV給電システム

非常時の宅内引き込みシステム


上記の鉛蓄電池は、再生品であり新品の80%の容量とみなし、1回の放電深度を最大50%目安に運用すると、1日最大5~6kWh程度の電力供給が可能です。停電が長期化した場合のために蓄電池を補充電する必要があり、太陽光発電を併用します。

 

太陽光発電は、蓄電池を充電する専用の太陽電池が必須ですが、もし平常時に系統連系(売電)している住宅用太陽光発電システムがあれば、その自立運転を含めた2系統が利用可能です。

しかしながら、天災の場合は天候不順で太陽光発電も思うようにならないことがあり得ます。

最終的なバックアップ電源として、プリウスPHVの車載リチウムイオン電池からヴィークルパワーコネクターという外部給電装置を使った電力供給ルートも確保しました。満充電時での有効利用容量は約6kWhですが、使い切った場合はさらにガソリンを使って発電でき、また天候回復すればルーフトップの太陽電池から1日最大500Wh程度の補充も可能です。

弊社の場合は、再生鉛蓄電池の実証実験を兼ねて、上記すべてのシステムを構築していましたが、今回の3日間の停電ではプリウスPHVの電源の出番はありませんでした。

 

ここまでの非常電源のバックアップは冗長すぎてお金がかかるという場合、再生鉛蓄電池と専用太陽電池の組み合わせのシステムで約40万円ほど(非常時の使用容量を絞ればそれ以下)のコストでスタートアップすることが一番安上がりです。ですが、上述したように平時も使うシステムでなければ有効性、信頼性が落ちますので、考慮しておきたいものです。今後の災害リスクをおそれ、コストをかけられるというならば、車をEVかPHVにし、V2Hシステムを導入するのが最も容易です。

災害が多発する状況が続けば、住宅新築時のZEH仕様に組み込まれる時代が来ると思われます。

 

以上